【海外の教育事情を知ろう】インターナショナルスクールと日本の小学校、比べてみるとこんなに違う Vol.3 ~国際バカロレアについて~

こんにちは、国際教育ライターの羽木です。

我が家の娘は公立小学校の4年生から、インターナショナルスクールへ編入しました。Vol.1では、インターナショナルスクールの制度や生活面について、Vol.2では、英語や算数などの教科の授業についてご紹介しました。Vol.3では、国際バカロレアについてご紹介します。

国際バカロレアの探求型の学び

多くのインターナショナルスクールが採用している国際バカロレアという教育プログラムですが、ここではその仕組みと、小学課程における授業についてご紹介します。

国際バカロレアとは

国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は、スイスに本部を置く国際バカロレア機構が提供する教育プログラムで、国内外の多くのインターナショナルスクールが採用しています。

親の仕事の都合などで、国を移動しながら学ぶ児童が同じ教育内容とシステムで教育を受けられるようにと始まりました。多文化に対する理解と尊敬を通じて、平和でより良い世界の実現のために貢献する探求心、知識等のある人材の育成を目的としています。

小学・中学・高校課程がありますが、学校によりどの課程を採用しているかは違います。高校課程で2年間のDP(Diploma Programme)というプログラムを終了し、試験に合格すると国際的に通用する大学入学資格として認められます。

日本でも、文部科学省は国際バカロレア(IB)教育の普及を目指しています。インターナショナルスクールだけでなく、日本の学校でも取り入れられ、国際バカロレア認定校・候補校は増えています。

参照:文部科学省のサイトより「IBとは」・「認定校・候補校」

国際バカロレアの「10の学習者像」

国際バカロレアが目指す「10の学習者像」というものがあります。我が家がインターナショナルスクールに興味を持ったのは、英語が上達するという事はもちろんですが、このような生徒像に共感し、娘に探求型授業を受けさせたいと考えたからです。

・探求する人

・知識のある人

・考える人

・コミュニケーションができる人

・信念のある人

・心を開く人

・思いやりのある人

・挑戦する人

・バランスの取れた人

・振り返りができる人

小学課程における国際バカロレアの授業

階段をペンキでピアノに(筆者提供)

ここでは、娘が実際に体験した小学課程の国際バカロレア(PYP:Primary Years Programme)の授業についてご紹介します。PYPの授業では、気候や文化についてなど、理科と社会にあたる内容を学ぶ事もあれば、演劇や動画撮影など美術的な内容を学ぶ事もあります。高学年になると、トランスジェンダーや性教育などもあり、教科融合型の授業が基本です。

教科書はなく、先生が国際バカロレアの理念に基づいたテーマを設定します。先生は教えるというよりも、生徒がテーマに沿って自らリサーチし、探求出来るようにサポートや指導するファシリテーターといった役割を果たします。

異文化について学ぶ

海外のインターナショナルスクールとオンラインでつなぎ、お互いに自国の文化や習慣についてリサーチしてまとめて、プレゼンしあうという授業がありました。娘の学校ではジャカルタやインドの学校と行っていました。

ジャカルタの学校との時は編入直後で英語が分からずあまり理解できなかったようですが、インドの時には英語力も上達していたので、日本の文化について外国人にも分かりやすいようにまとめるのに苦労しながらも、余裕をもってプレゼンが出来たようです。

偶然にも、その日は学校のイベントで浴衣を着ていたので、インドの生徒たちには物珍しかったようで、娘が画面に映った瞬間に大きな拍手をしてくれたと嬉しそうでした。

Food Waste

Food Waste(食料破棄)についての授業も印象深かったようです。この授業では最初に世界でどれくらいの食料破棄があるのかを調べたそうです。その一方で食べるものがなく、レストランなどから出されるゴミ袋を漁って食料を確保する人々の映像を見たそう。その後、学校中のランチの後に残った食べ物を集めて、量を計算しました。

娘の学校は100人ちょっとの小規模な学校で、食堂はありません。ランチはお弁当を持参する生徒が多いのですが、それでも3kgはあったそうです。年間の授業日が180日なので、計算すると年間で約540kgの食料破棄になるという訳です。何となくいけない事だと感じていた事が、自分ごととして意識する事が出来たようでした。

政治と政党

各国でどのような政治が行われているのかという事を学んだあと、生徒は自分たちで政党を立ち上げ、実際に校内で先生や生徒たちにプレゼンをして、投票するという授業でした。数人の政党もあれば、1人の政党もありました。娘はクラスメートと3人で政党を立ち上げ、「Education(教育)」「Environment(環境)」「Equality(平等)」を政策に掲げました。

中にはエンターテイメントを強化するという政策で、Netflix代を無料にするという政党も現れ、娘は低学年の生徒の票がその政党に集まるのではないかと心配していました。結果は、娘の政党が1票差で1位になったそうです。

Conflict

Conflictは紛争・対立という意味で使われます。Conflictというテーマで、各自でリサーチして、まとめた内容を発表するという授業もありました。Conflictに関連する内容であれば何でも良いという事で、第1次世界大戦や第2次世界大戦、ロシアとウクライナを選ぶ生徒もいましたが、中にはサッカーが大好きな生徒は、サッカーにおけるConflictをテーマにしたりと、各自の興味に合わせて選んでいました。

娘が選んだのは「レイシズムとアパルトヘイト」でした。そのテーマを選んだ理由は、以前やはり国際バカロレアの授業で「移民」についての授業があり、その際に学んだ「奴隷貿易」について、印象に残ったからだそうです。

自分でリサーチするのはもちろん、南アフリカに住んでいたことのある先生にインタビューしたり、ネルソン・マンデラについて調べたりした内容をまとめ上げ、発表していました。

インターナショナルスクールでの国際バカロレアの制度や授業内容についてお伝えしました。小学生のうちに英語で行われる授業を受けたり、国際バカロレアの探求型学習を体験できた事は娘にとってよい経験になったと思います。

国際教育ライター

羽木